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令和3年講習会(4月)

 令和3年4月16日(金)、講師に安井様をお招きして講習会が開かれました。

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続き

 今回は安井様が中央大学法学部で所属されていた犯罪科学研究会より「犯罪科学」をテーマに取り上げ、犯罪研究における主張や学問について、大学での経験を交えてお話しいただきました。


<犯罪者に対する研究>

 犯罪者を研究する上で「犯罪を行うのは生来性による」という考えがあります。ここでの生来性とは身体的・精神的な特徴を指し、犯罪者は共通した生来の特徴を持ち、その性質を持つ者は生まれながらにして犯罪を起こすことが決まっている、という主張です。
 しかし、”犯罪者”と一括りにしても、程度の大小や初めから悪意があるものから事故的なものまで存在し、関係者各個人を取り上げてみても気性と思考、本人の育った環境や当事者同士の関係性、当時の状況などの複雑な要素が絡み合っているため、理由や原因を一括りにすることは非常に難しいことが伺えます。
 なお、講習会では他にも犯罪者と非犯罪者の比較研究や刑法政策の観点からの研究があることにも触れていただきました。


<被害者に対する研究>

 被害者学とは、被害者の側から犯罪原因を考察する学問です。
 具体的には犯罪における被害者の役割に注目し、犯罪に至る過程やその有責性、犯罪に巻き込まれやすい傾向など「どのような人が被害にあうか」を研究します。


<犯罪科学研究会での研究>

 安井様が在学されていた当時は学生闘争の真っただ中であり、大学の講義も中止されるような混乱の時代でした。
一方で、所属された犯罪科学研究会は定期的に機関誌を発行するほど活動的であり、そのような状況下でも規模を縮小して当時の刑務所への見学や学外での調査・研究を行われたそうです。
 個人的に興味深かったのは刑務所見学のお話で、刑務所における優等生の役割や、刑罰の重さによる住み分けなどをお話しいただきました。


 今回は「犯罪科学」がテーマということで、どのような研究がなされてきたのかを学びました。
 多様な犯罪があるように、それに関わる人々の背景も多様なため、一概に原因を求めることは非常に難しいことがわかります。そのため、原因を求める研究からアフターケアや政策の方向にシフトしていくのは当然の流れであり、その方が生産的だと思いました。(応用被害者学)
 被害者への政策と言えば、身近なところで挙げると、痴漢などの性犯罪では被害者が事件でのトラウマに加えて、部外者からの心無い言葉や二次被害を受けることが多いと言われています。また、日本は痴漢などの性犯罪をはじめ、ハラスメントやいじめなど個人の尊厳を傷つけ人権侵害につながるような犯罪や、それらの事件の根底にある問題を軽視する節があります。さらに被害者(弱者)叩きの傾向も高く、今日ではSNSの普及により被害者に対するバッシングが“直接気軽にしやすく“なりました。
 今後の応用被害者学の研究による対策と世間の意識の変化でそのような被害者が一人でも減り、救われる人が増えることを祈るばかりです。

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 安井様ありがとうございました。

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