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平成30年度講習会(1月)

平成31年1月18日(金)、講師に織原様をお招きして鉄道講習会が開かれました。

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続き

まず話題となったのは、2日前(1/16)に埼玉新都市交通(ニューシャトル)で発生した脱線事故。
プレスリリースによれば、車両のゴムタイヤがバーストして脱輪し、案内レールの支持ボルトが変形した模様です。

新交通システムの車両に使われるタイヤは、パンクなどしても応急的に走れるよう内側に金属が埋め込まれた中実構造になっています。しかし今回は片方のみバーストした為か、車体が大きく傾いてしまいました。高架上を走りますから、乗客が万が一投げ出されたりすると重大な事故になります。
織原様によりますと、タイヤのパンクやバーストが原因の事故は前例が無いそうです。
今後は運輸安全委員会により調査が行われ、いずれ調査結果が公表されることと思います。

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つい最近山手線で試験が行われた自動運転も話題に上がりました。
山手線を営業するJR東日本が自動運転を導入する背景には、同社運転士の多くが定年を近く迎え、かつ人手が不足していることがあります。教育のコストを抑えたい事も目的の一つのようです。

鉄道での自動運転は地下鉄や新交通システムを中心に導入されてきました。
地下を走ったりゴムタイヤで走行することで雨による空転・滑走の可能性を低くしたり、高架または地下を走りホームドアも整備して人や自動車の進入を排除することで、自動運転に適した(閉鎖的)環境を作り上げていました。

山手線には1か所ながら踏切が存在します。また全区間で地上を走行し、ほぼ全ての区間で他路線の線路と並走します。どれも今までの自動運転導入路線に無かった特徴です。
1編成に11両という車両数も、副都心線・有楽町線の10両編成を超え国内最長となります。

人や自動車の侵入の可能性が上がりますと、いざという事態に列車をどう防護するかが問題となります。踏切では踏切障害検知装置で侵入を検知できますが、これ以外の線路内侵入は運転士や車掌が判断して列車を防護していました。
ホームドア整備に必要な費用も無視できません。大谷石など古いホームはホームドアの重量に耐えられず、導入に合わせてホームも改修する必要があるとのことです。ホームドア自体のコストを抑えることも課題点です。

列車が地震などで非常停止した後の避難誘導や運転再開の判断などを誰がどこで行うか、また誰の責任になるのかなど、講習会参加者の間で様々な議論が交わされました。

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鉄道とセキュリティの関連についても議論が起こりました。
昨今、国内の官公庁を始めとする主要施設にもサイバー攻撃がひっきりなしに行われているとの意見が、参加者より出されました。

鉄道も例外ではないようです。2016年にはアメリカ・サンフランシスコ市営鉄道がクラッカーによる攻撃を受け、2日間に渡り改札を開放せざるを得なくなる事件が発生しています。国内でも平成30年、多摩都市モノレールのファイルサーバがコンピュータウィルスに感染する被害が出ています。

無線は遮るものが無ければ公衆が容易に傍受可能です。無線式列車制御システムの導入に伴いセキュリティ面のリスクは従来より増大します。
もちろん電文の内容は暗号化されていますが、それも将来解析されてクラックされることがあるかも知れません。ソーシャルエンジニアリングによって内部資料が漏洩する可能性もあります。
鉄道に関わる業務を行う私達も脅威について知っておくことが重要と感じました。

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『無線式列車制御システムになり、1軌道に複数の列車がいた場合や軌道回路が無い場合の連動の概念をどうするか』という質問が出されたようです。

私個人の考えですが、「軌道回路があった時と大きく変わらない」と予想しています。
連動は転てつ装置と信号装置の連鎖関係であり、鉄道が定まった進路を進む交通機関である以上、これから先もその概念が大きく変わる事は無いと考えます。

軌道回路の無かった頃はてっ査桿を車輪が踏むことにより、てっ査鎖錠(通過中の転てつ器を鎖錠する)を実現していました。てっ査桿は軌道回路に置き換えられましたが、軌道回路は列車位置情報に置き換えられていくことになります。

無線式では車軸発電機と位置確定用地上子で列車位置を算出する為、車輪の摩耗や空転・滑走によってわずかながら誤差が発生します。
てっ査鎖錠区間の在線検知を厳密に行う場合、車軸検知器を設けることも手段の一つと考えます。新幹線の終端過走防護ではありますが、低速度の過走を防ぐ為に車軸検知器を用いている例があります。

鎖錠は他にも進路鎖錠や接近鎖錠などがありますが、やはり大きく鎖錠の概念が変わることはないと考えます。

連動図表の記述をどうするかは線区によるのではないでしょうか。
軌道回路が設置されていないにも関わらず、従来と同じ「○○T」という区分を採っている例もあります。赤羽を走る埼京線にはATACSが導入されていますが、連動図表がどうなっているかなど大変気になります。

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次回の講習会にてどの様な議論となるか楽しみです。
織原様、今回もありがとうございました。

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