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鉄道総研技術フォーラム2017

平成29年8月25日、国立市の鉄道総合技術研究所で行われた
鉄道総研技術フォーラム2017へ行って参りました。

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続き

鉄道総合技術研究所は国鉄の鉄道技術研究所から受け継がれた研究・開発機関で、
超電導リニアやフリーゲージトレインを始めとする研究開発が行われています。

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敷地内には試験線が敷設されており、実際の路線を想定した様々な試験を行っています。
下の写真でも開発された軌道の試験が行われています(右奥の白い部分)。

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設備公開として試験設備や実験棟の一部を見て回る事ができましたが、
撮影が禁止されている箇所が多々あり、研究機関故の情報保護の重要性が感じられました。

途中気になった展示の1つに、人間科学ゾーンの『コミュニケーションエラー防止訓練教材』を挙げたいと思います。

指示者と作業者が別々の部屋に離れており、両者は無線でしか会話できません。
作業者はこの状況下で、指示者からつみ木のブロックを組み立てるよう指示を受け作業します。

この両者の作業映像が教材となっており、訓練の受講者はまず両者の会話が不十分である映像を視聴し、その中から曖昧な表現・用語を学習します。
次に相互に確認しながら会話を行っている映像を観て復唱・確認会話の方法を学習します。
思い込みや聞き間違いによって発生する認識のずれ(コミュニケーションエラー)を防止する事がねらいとの事です。
「きっと・だろう」を防止する為のこの訓練は、鉄道に限らずあらゆる職種において有効であると感じます。
少しの疑問点でも確認や復唱を行っておく事がその後の為に重要であると再確認しました。

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続いて実験棟内では『レールガス圧接バーナー自動揺動装置』の説明を受けました。

レール溶接方法の1つにガス圧接法というものがあります。
レール同士を突き合わせガスバーナーで加熱して溶接する方法で、溶接の強度が高いという特徴があります。
しかし加熱途中でバーナーを適度に揺らして加熱し過ぎを防ぐ必要があり、加減を誤ると溶接の強度が低下したり溶接後にレールが損傷する危険があります。マニュアルが無くいわゆる職人技に頼る状況が続いています。
この工程を自動化するものが自動揺動装置で、技術者の育成が短期間となり品質の安定に繋がる利点があるとの事です。
精度が要求される保線分野では自動化・マニュアル化が進んでいると思っていました。
現在も職人技に頼っている部分がある事実は意外に感じます。

普段触れる事の少ない信号以外の技術にも広く触れる事ができました。
人間科学分野については一見鉄道と関係無いように思えますが、過去を遡ると人間のコミュニケーションエラーが要因となった事故は多数あります。
システム上で誤操作・誤動作によるミスがあっても安全側に動作させる「フェールセーフ」という設計手法がありますが、今後は人間のミス自体を取り除こうとする手法の研究もより進んで行くことと思います。

鉄道という1つの業種ですが、幅広い方面からの技術アプローチがある事を実感できた技術展でした。

・・・おまけ・・・

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鉄道総研の正門向いには新幹線の車両が1両保存されています。
かの有名な0系新幹線…ではなく951形という車両です(よく見ると鼻の長さや窓が違います)。
2両のみ製造された速度試験車で、昭和47年に国内最高時速286kmを樹立しました。
走行した期間は約10年と長くありませんでしたが、21世紀に入るまで試験台の上で多くのデータを残しました。