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閉そく方式を訪ねて(その1)

「閉そく」…『一定の区間に同時に二以上の列車を運転させないために、その区間を一列車の運転に占有させることをいう。』(鉄道に関する技術上の基準を定める省令第二条十五)

続き

鉄道の歴史上、閉そくの実現には「固定閉そく」の概念が長らく使われて来ました。
近年、無線・コンピューティング技術向上に伴って固定閉そくを脱却した「移動閉そく」が実現し、
海外では既に100線区近くで導入されています。
当社がある赤羽には埼京線が通っていますが、この線区でも無線保安システムのATACSが供用されており、大変身近に感じております。

他方、今やオールドファッションどころか博物館入りすらしている非自動閉そくは、国内で施行しているのが残り約10線区と絶滅秒読み段階です。

非自動閉そくは人間の注意力に頼って閉そくを行いますので、保安度は低く人件費も掛かり、
自動閉そく式に置き換えられて行くのは必定の事でした。
そして無線式列車制御システムが今後台頭すると、従来の自動閉そく式もこれに置き換えられて行く事が予想されます。

しかしながら、「閉そく」の基本中の基本である非自動閉そくを知っておく事も無駄ではないと考えました。
また自動閉そく式にも方式の差異があり、非自動閉そくとの関連がある事が解ってまいりました。

本年、閉そく方式に特徴のある線区を訪れる機会がありました。
今回はその中から4線区をピックアップし、2回に分けてご紹介致します。

なお、この記事では「自動閉そく式」の定義を本来より広げています。
自動で閉そくが行われれば自動閉そく式と思って読み進めて頂ければ幸いです。

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初めに取り上げるのは小湊鉄道線。
千葉県の五井駅から高滝・養老渓谷を経て上総中野駅までを結んでいます。
駅舎や車両に昭和の面影を色濃く残しており、ロケーションとアクセスの良さから広告などに使われることの多いローカル線です。

この路線では、五井〜上総牛久で自動閉そく式(特殊)、上総牛久〜里見で票券閉そく式、里見〜上総中野でスタフ閉そく式をそれぞれ施行しています。
1線区内に3種類の閉そく方式が同居している線区も、今となっては数少ない存在です。

票券閉そく式は、以前の記事で述べたスタフ閉そく式の発展版で、
通行票である通票に加えて「通券」を用いることで同方向への続行列車を設定可能にした方式です。
ただしスタフ閉そく式と異なり、閉そく相手駅との打ち合わせが必要です。

続行列車があるダイヤの時、出発駅と到着駅で「通券を使用する」旨を打ち合わせておきます。
出発駅の駅長は「通券函」に通票を鍵としてセットし、通券函を開けて通券を1枚取り出します。
必要事項を通券に記入後、「通票を提示しながら」通券を先発列車に対して渡します。

この「提示しながら」という点は重要で、列車に対し閉そくが確保されている事を1つしか無い通票によって証明しています。
通券は到着駅で速やかに使用停止とされ、到着駅は列車が到着した旨を出発駅に連絡します。これにより、列車が閉そく区間から出たことが証明されます。
その後、通票は出発駅を最後に出発する列車に渡され、到着駅に渡ります。
ファイル 485-1.png
(実際の小湊鉄道線での取扱を表した例。通票が101列車ではなく次の1列車に渡っているのが判る。スペース上、打ち合わせなどを省略している)

平成10年、小湊鉄道は里見駅の交換(行き違い)設備を使用停止すると共に無人化しました。
この際に票券閉そく式が廃止され、上総牛久~上総中野(路線の約60%)は1閉そくのスタフ閉そく式とされました。

しかし、沿線小学校の統廃合に伴って列車を増発する為、小湊鉄道は平成25年に里見駅の交換設備を再整備します。
1つにしていた閉そくを再び分割する必要がありましたが、なんと駅を有人化して票券閉そく式を復活させたのです。
出発信号機は新設されず(誤出発防止のATS地上子は整備)、列車は駅長の出発指示合図で出発して行きます。

閉そく区間を新たに分割する場合、周囲の区間に合わせて閉そく方式を自動とする手法が無難と思われますが、小湊鉄道では上記の手法を採りました。
高々15年振りとは言え、21世紀に非自動閉そくを復活させたことは特筆すべき点と考えます。

東京駅からたった2時間余りで行ける場所にこうした環境がある事は奇跡的です。
ぬれ煎餅で有名な銚子電鉄も千葉県にあり似たような環境ですので、近い内に訪れてみたいと思います。
なお、小湊鉄道の反対側にあるいすみ鉄道は電子閉そく(電波方式)ですので、こちらも要注目です(車両ばかり注目されていますが…)。
ファイル 485-2.jpg
(駅長から運転士へ通票が授けられる。『牛久・里見、通票サンカク!』)

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続いて取り上げるのはJR北海道の路線です。
札沼線の石狩月形〜新十津川ではスタフ閉そく式が、
釧網本線ほか一部の線区で特殊自動閉そく式(電子符号照査式)が、それぞれ施行されています。

札沼線のスタフ閉そく式は、道内最後となった非自動閉そくです。
この他に江差線、留萌本線の末端においても施行されていましたが、利用者激減から両線区とも近年廃止されています。
札沼線のこの区間も廃線がほぼ決定されており、今後2~3年程度で消滅すると思われます。
ファイル 485-3.jpg
(大勢の鉄道マニアが押し寄せる中、スタフの授受は平然と行われる)

JR北海道の電子閉そくは、いずれも車載器と駅のアンテナで通信を行う方式で、電子閉そく導入当初のものです。
特に日高本線は電子閉そくの実地試験が行われた路線でした。
日高本線についても、平成27年の台風被害で路線の80%が不通となり、復旧費用対効果から不通区間の廃止がほぼ決定されています。

沿線住民に対する講演会において、
「復旧費用を低減させる為にスタフ閉そく式で復旧させてみてはどうか」
という提案が出された様です(昨年の新聞記事より)。
これは、不通区間の内の鵡川~日高門別はさほど大きな被害が無いにも関わらず、
日高門別駅で列車を折り返すには電子閉そく装置を改修する必要があり列車を運行できていないことが原因にある様です。

スタフ閉そく式は非自動閉そくであり保安度が低下すること、閉そく取扱者=(当務)駅長を常駐させる必要があること、
ATS地上子に関連する改修が必要と思われることなどを踏まえますと、
上記の方法ではコストをさほど低減できずリスクが増していると考えます。
ファイル 485-4.jpg
(職場での仕事が少なくなり、他線区のアルバイトに出される日高本線の車両)

宗谷本線は日本最北端の路線ですが、最北端の稚内駅は電子閉そくの導入範囲から外されています。
昭和61年の導入当時、天北線という路線が隣の南稚内駅で合流していました。
稚内駅まで電子閉そくを導入すると、1駅間にも関わらず天北線の列車情報を設定しなければならないことを避けたものと推測します。
永山駅から電子閉そくが始まる点も、新旭川駅以南で石北本線の列車と線路を共用していますので、同様の理由で説明がつきます。

社内講習会に講師としてお招きしている織原様は電子閉そく装置の開発に携わっていらっしゃった為、当時のお話を伺う機会がありました。
国鉄の民営化直前、かなりの急ピッチで電子閉そく装置を製作・納品しなければならず、従来装置などとの互換性は当初から考慮されなかったとの事です。
基本設計の大切さ、仕様決定後の方針、試験設備とテストの重要さについてお話を伺い、どの工程も極めて厳しいスケジュールであった事が分かりました。
ファイル 485-5.jpg
(南稚内駅で行われる車載器の受け渡し。自動閉そく式ながらも人の手が介される一幕)

現在、電子閉そく装置の保守部品は製造中止になっているものがある為、電子閉そくを他の閉そく方式に置き換える線区が出てきています。
しかしJR北海道は経営難から置き換えが難しく、「今後も使い続けたい」との要望がメーカーに出されている模様です。
今後の動向が気になります。

(その2へ続く)

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